刀ミュ衣装についての感想と考察

服飾のプロ目線の刀ミュ衣装についてのあれこれ

歌合

葵咲本紀もまだ書いてないけど記憶が新しいうちに歌合の感想です。
現段階で配信を見れていませんので(ディレイ待ち)、会場で見て感じたこととキャストさんのTwitter写真などからの萌語りです。いつも萌語りですね。はい。
最初にざっとした感想、後半に細かい解説?考察?です。後半はお暇な方はどうぞ。
今回は蜂須賀様の魅力にやられっぱなしでほとんど彼を見ていて終わったと言っても過言ではないので、いつもに増して内容に偏りがあります。
みんな好きなんですよ!でも目が足りないでしょう?あと20公演くらい見たかったですね。

 

白衣装
『神様感』と『とうらぶっぽさ』はどこから来るのか

冒頭から度肝を抜かれた神様な白衣装ですが、どこかで見たような気がするけどどこでも見たことがないお衣装です。「わあ神様だわ」ってなった。
狩衣テイストは刀剣乱舞っぽさがある。でも、下衣がストンとした形だと狩衣のイメージが強くなってしまって三日月とかの平安衣装になってしまう。それはちょっと違う。
ギャザーたっぷりのスカートはギリシャ神話の神様や邪馬台国卑弥呼みたいな”太古の神様””布を纏うだけの古代”を彷彿とさせる。
このミックスが刀剣の付喪神っていうのにとても相応しいデザインだなぁと感心した。
優美で厳かさを醸し出す全体の調和が素晴らしい
男士にあのギャザーたっぷりなのは普通出てこないですよ。(ギャザーたっぷりのスカートは後に解説)
女性らしいデザインを【刀剣男士】に着せるっていう、レディース・メンズのディテールの分類をまったく気にせずに組み合わせる発想。これが案外でてこないんですよ。取り入れてるだけなので仕上がりは【かっこいい刀剣男士】なんですよね。デザイナーさんすごいな!

 

衣装の構造
あのスカート部分の構造がなぞだったんですよ。
・細かいギャザーがたっぷりきれいに出ていてなおかつ動くとふわりとする→軽やかさの謎
・下に次の衣装着てるけどその影響が出ていない→シルエットに響かないだけのしっかりした作り
この両立がどういうこと???だったんですが、ガン見した結果予想がたちまして、そして大楽後のゲネ写真で確信しました。

両立ができないのでは?と思った理由は、
細かいギャザーがたっぷりでる生地は柔らかく軽い布地。回転するとふわっと広がってきれいです。しかし、その軽い布地であのボリュームを出すには大量に布を使わないと出ません。大量に使うと布自体の重さでせっかくの軽さが死ぬ。
構造は二枚重ねでした。
デザイン的な『ギャザーたっぷりだけどシルエットはストンと落ちて、動くとふわっとする』
必要条件的な『下に着込んたものがわからない』『ポーズや動きを妨げない』(後者はポージングするシーンで足を開いたりがあったので)
この二つをスカート部分を二枚重ねにすることでクリアしてました。わかればなんてことないですが、完成イメージから導き出すのはなかなか難しいものです。さらにいうと、「秘密を暴いてやろう」という視点で見ているのにわからなかったところに、上手に作ったなあと感心しました。配信でアップで見たらわかるのかな?前寄りの席で双眼鏡使って見たんですけどねえ…蜂須賀に目を奪われたりなんなりして(言い訳)
土台となるスカートはフレアスカートで、その上にギャザーを寄せた布を前中心部分を明けて重ねてます。前中心には色布です。
一周全部重ねていないのは、土台スカートとギャザー布の広がり方の違いと予想。
ギャザー布は切れ目がある方がなびき方がきれいにふわっとするし、しゃがんだ時にストンと落ちることでギャザーの流れがきれいに見える。

 


顕現のシーンの写真ですが、しゃがんでいる刀剣男士に注目してください。篭手くんと物吉くんがわかりやすいです。
これが一周ある普通のスカートの形だと前側に引っ張られてギャザー(ドレープ)の流れが変わります。

そして、上衣は着物の作りに見せつつ、狩衣デザインのベストっぽいものと薄い生地を使った着物袖の組み合わせにより袖の透け感を出しつつボディの透けはカバーしてるんじゃないかな?という合理さも感じます。
この白衣装は前回の祭り衣装と同じで、厳密なフィット感を必要とせずに製作できるのでパターン起こしやフィッティングに割く労力を他に全振りできる無駄のない作りでもありますね。
最高。あのひらみ最高。お袖がなびくのも最高。


軽装
まさかの!ありがとう!!!思い立って大阪出陣したので誰よりも早く蜂須賀の軽装も見たよ!(同時に見た人はたくさんだけど)ここは荒ぶります。
軽装の何がすばらしかというとその着こなしの差す。
青江は身頃にちょっとシワが寄ってて帯も成人男性に比べると少し上です。そうだ青江は脇差だったわ!!っていう、華奢さと少しの幼さを残してます。
対して蜂須賀と兼さんは【和服を着こなせる男性】スタイルなんですが、キャストさんは細いので補正とかしてるかな?(【和服を着こなせる男性】の体型って腹回りがしっかりしてる寸胴なので)
蜂須賀様、ねえ見た?見て!!
衿(衣紋)の抜きが多いんです。うなじが見える、女性が浴衣を着る時に衿の後ろを下げるやつです。それによって漂う姫感。素足は男の足、仕草は優雅。性別とかどうでもいいよね神様だもんね。ありがとうはっちー。
兼さんは、ミュの兼さんってちょっとべらんめえっぽいところがあったりして、まあ脚は開くし(見えてはいけないものが見えるんじゃないかとハラハラした。下にちゃんと見せてもいいやつ履いてた)、ちょっとガサツにも見える動作します。
が、着崩れないんですよ!!!
最後にすっと脚を閉じて立つとかっこいい。あんなに暴れたら乱れるでしょ?なんで?キメ顔のかっこいい兼さんを印象付けて去っていく。ありがとう。
ただ着せただけじゃない、キャラクターに合わせた着せ方をしてくれるお衣裳さん大好き。
それと、イラストではわからなかった帯の結び方も青江は浪人結びで兼さんと蜂須賀は貝の口でした。(これ、違ってたらそっと教えてください。というか、和装は明るくないのでなんか違うこととかあったら教えていただけると嬉しいです)

 

お衣裳さんが素晴らしい話
ヘアメイクさんも素晴らしいんですが、衣装ブログなのでお衣裳さんの話をします。
蜂須賀役のキャストさんのツイッターで二部衣裳の写真があります。

 


白ブーツきれいすぎない?!という驚き。
白ブーツ(しかもソールが黒)ってステージ上での短時間でもかなり汚れるんですよ。このキャストさんは写真加工でブーツの汚れ消したりするタイプではないと思っているので、多分これが本物そのままですね。
このTwitterが北海道公演なので新調したとしてもここまでの間にかなり履いてます。ということは
毎回めちゃくちゃ手入れしてるよね!
思い返せば、今回の天狼傳衣装は合皮じゃん?あれは化粧品とか着くと劣化めちゃ早いじゃん。今剣ちゃんの阿津賀志衣装ピカピカにきれいじゃん。作り直したのかな?って思ったけどどうなの(正解は中の人しか知らない)。
どんなに気をつけて着替えても本番中に衣装チェンジがある限りはメイクが付いてしまうし、汗だってかきますよ。(見てても汗だくなのわかりますよね)
替えが2,3着あったとしても毎公演ごとに汚れやシワを落として手入れをして、完璧な状態に整えてくださってるんですね。だから毎回刀剣男士あんなに完璧にかっこいいんだ〜。
お衣裳さん、ありがとう。
軽装もピシーッとシワひとつないですからね。
パンフレットのスタッフのところに衣装進行やヘアメイク進行まで載ってます。もう本当に感謝しかないし、美味しいものたくさん食べさせてもらってほしい。なんならグルメカード贈りたいです。


ライブ衣裳(二部衣装)のあれこれ
今回の二部衣装のチョイス最高でした!衣裳決めた人ありがとう!!!!
今まではそれぞれ最新作の二部衣装の着用です。曲のメンバーによっては合わせてお着替えもありましたが(石切丸が二種類着たり、小狐丸がソロ曲に合わせてチェンジした)、基本は最新作を着てました。
今回は石切丸はみほとせ初演、小狐丸はつはもの、今剣ちゃんは阿津賀志、安定と長曽祢さんは天狼傳
出てきた瞬間、神様に感謝したよね。(それと同時にどっかで衣装チェンジしてくるのかまさかの会場がわりなのかビクビクもしました)
好みの問題なのですが、私は阿津賀志巴里はこれだけデザイナさんが異なることもあって2018で刀剣男士がずらっと並んだ時に巴里メンツだけなんか浮いて見えたところが残念に感じました。
そんなこともあり歌合の上記メンバーの衣装チョイス、俺得でした。
石切丸はみほとせ初演大好きだし、天狼傳はもう2度と見れないと思ってたし(でもはっちーは新衣装のままだったの嬉しい。あれ好き)、今剣ちゃんはつはものも好きなんですが阿津賀志の中では完成度が高いうちの一振り。小狐丸のつはものはずっとチラ見えしてるおへそ。
ちなみにブロマイドはそれぞれ最新作を着用しているので、撮影時点ではそっちを着る予定だったんでしょうかね。変えよ、って言い出した人ありがとうありがとう。
ディレイで確認しますが、今剣ちゃんは多分ブーツは新しくスタイリッシュになってたと思います。


戦装束で改めて感じたこと
あのね、明石国行のシルエットが完璧なんですよ。ヒップラインがすっごくきれいなのはパンツのラインとジャケット丈。ジャケットのシェイプ具合とか神業ですよ。
立ち絵の上着、ひら〜っとしててわからないじゃないですか。あの絵でいくと多分もうちょっと丈が長くなるようなところをあの丈にしているからこそ明石のスタイルの良さが引き立つ。
感心して明石のヒップラインガン見したところで、ふと堀川に目が行ったんです。
堀川のパンツ(スラックスという言葉の方がしっくりくる)って、ダサいやつですよ。中途半端なゆとり感は学校の制服を彷彿とさせますね。
それが堀川は全然ダサくない。これもパンツのライン(シルエット)がきれいなんですよ。ジャケットのウエストも少し絞ってて、決してタイトではなくゆとりを残しつつきれいなシルエットにしているところが『堀川の優等生っぽさ』をかもしてる。
篭手切くんとかもうわーっと思ったんですが、これはあおさくで書くべきですね、はい。
忘れなかったらかきます。
相変わらず小原さん(戦装束のデザイナさん)は素晴らしい仕事しますね。
超絶かっこいい明石をありがとう!!!

 

最後に好きな話をしよう
蜻蛉切鶴丸(あおさく衣装)の曲のバックダンサーがみほとせ再演の第二形態で揃ってたの超絶かっこよかった!!見て!そこ見て!あおさくで揃えないでそっちもってくるの天才。はー…刀ミュくんありがとう。衣装決めた人ありがとう。

みほとせ再演の第二形態のブラックのスーツにゴールドのネクタイでした。しかもハット付き。

バックダンサーに「和」を着せないことで刀剣男士二振りのあおさく和テイストが映えていました

バックダンサーさんの衣装は過去作からなんですが、全作を上手に組み合わせてました。天狼傳とむすはじは少し似ているし、巴里は第一形態はアスコットタイでロングジャケットなのに脱ぐとブラウンのショートジャケットなんですよ。

どのタイミングでどの組み合わせでどの形態の衣装を着せるか、そこまで見始めるとほんとうに奥が深くつくづく考えられたステージだと感心しきりです。

歌合、楽しかった。

 

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余談:イラストを立体化するということについて
今回の歌合にはあまり関係ないのですが(キャラデザからの新衣装がほとんどないので)、改めて戦装束と図録を見比べてぼんやりと考えました。
イラストは魅力的に表現するために誇張したり省いたりしますね。それがイラスト表現の良さです。
では、そのイラスト(キャラデザ)から衣装を作るときにどこまでを忠実に再現するのが正解なのか。
物理的に不可能なものもあります(蜂須賀極の羽衣とか)。
もう一つ、イラストを描く人は服の構造を考えて描いたりしませんよね。それはイラストとスタイル画の違いで、知ってて省くこともあるだろうし「らしく」見えることが大事だと思うので知らなくてもいいことだと思っています。
魅せる絵のためには実際だとそうはならない状態もあるでしょう。
それまで忠実に再現したら出来上がった衣装としては破綻したものになることもあります。
「イラストには線がないから縫い目を入れない」は無理です。
サイズバランスをそのまま立体の服に持ってくるととんでもないバランスのものが出来上がったりします。
イラストでの表現とそれを立体にするときに誇張するところと削ぎ落とすところ、【らしくみえる】ために変えるところが必要でその加減が衣裳デザインの仕事なのかなぁと。
房の大きさ、紋の位置、一つ一つが全体の仕上がりに大きく関わってくる。

周囲の2.5を見る人やコス自作の人にちょっと意見を聞いてみました。
『原作(絵)に忠実な方がいい』という答えでした。
でも実際見比べると意外に調整されているんです。そんな風に【気づかせない技術】ってすごい。今回触れた明石国行の戦装束もそうですが、単純に見えたままを再現するのではなく『よりキャラらしくキャラの良さを引き立たせる立体化』。すごいなあ。