刀ミュ衣装についての感想と考察

服飾のプロ目線の刀ミュ衣装についてのあれこれ

源氏双騎一部衣装

源氏双騎一部衣装


双騎の一部衣装はデザイナーさんは小原敏博さんです。舞台衣装ではかなり有名な方です。詳しくはウィキとか見てみてください。
まず、このブログは衣装についてのブログなので今回の双騎の賛否だとかそういうのは抜きです。ただし、前提として私は曽我物語を知りません。見たことありません。今回のタイトル発表になって、曽我兄弟じゃない?みたいなザワザワで慌ててググりまくって初めてあらすじをなんとなく読んで理解しきれないままに双騎観劇に至りました。
そのため実は歌舞伎の演目の衣装になぞらえていたとかいうのは千秋楽後のTwitterの博識な皆様の情報で知りました。
というのが大前提で、衣装について感じたことを綴ります。


今までの第一部の衣装=戦装束(+人間キャスト)です。平面を立体にする難しさとかはありますがメインのデザインは出来上がっていますし、衣装の予想も何もキャラクターそのままです。ですから、今回初めて「衣装デザイナー小原敏博」を見た気がします。

 

一部衣装が引き抜き(脱いでいくことで変わっていく)と+αでした。
そのギミックと効果的な見せ方に感心しました。

幼少期
桃色のおべべ(くそかわいい。兄弟で微妙にデザイン違うのがにくい)+膝下が素足で幼さを表現。
(兄は下衣の裾を内側に織り込んで膝で止めてる&弟の膝の黒いの秘密アイテムじゃない?と予想)
今剣ちゃんの内番服にも似たポンポンがついたおべべはあの時代のベーシックな形みたいです。

 

元服
ベースの青い装束(兄弟で微妙に色味違うのもいいよね)
幼少期の桃色の上着なし、膝下はまだ素足。弟は下衣に黒い布を巻いて僧の修行感が出ている。
この装束にはそれぞれ蝶と鳥がモチーフの柄が入っている(後から曽我兄弟のモチーフと判明)&襟元に源氏兄弟の戦装束と同じモチーフ(髭切は丸いやつ・膝丸は扇のアレ)がついている。この辺になんかいろんな意味が込められてんだろうな〜とふんわり感じました。
そして、その襟元のモチーフから伸びる紐が髭切が黒で膝丸が白なんですよ。その先端のふさは戦装束と同じ色味なのに?!

綾なす音(兄弟がそれぞれ歌い、あのポニテになるところ!)
これは曲中に早替えしています。
兄は膝の裾上げを取り裾が長い下衣に。前髪も降ろしたよ!
弟は膝下に黒い脚絆(きゃはん・脚絆 - Wikipedia)。前髪ちょっと伸びたね?

傘の向こうでこの早替えが行われていたんですね。ディレイ配信は映ってるところしか見えない(当たり前)から早く全景欲しいです。

 

仇討ちの許しをもらいに母上と会うシーン
かみしもみたいなのを羽織っています。兄は白、弟は黒。源氏カラーです。ここでやっと上記の紐の謎が解けました。返し衿の色と紐の色が合うんですね。
細かい!やばい!!好きっ
正面は源氏の戦装束を思わせるデザイン×曾我兄弟。なんというミックス。
このかみしも風の羽織はサイドのプリーツが美しい!!舞に合わせてしなやかに揺れる。しかもグラデーション染めでしょ。
センターとサイドのウエストの紫のベルト部分が目を引きました。
このかみしも風の羽織からは覚悟と決意が感じられました。

 

最後の仇討ち
兄:袖を引き絞って丈を上げて、腕当て・脛当て
弟:右袖を抜き、腕当て・脛当て
かっこいいの極み。なんなのこれ。その時の弟のインナーが黒ノースリーブは最大に評価したい。


私は花組芝居さんの舞台を見たことがないので、舞台上で衣装を脱ぎ着することで役割が変わるというのが通常なのかはわかりません。けれど、今回の双騎の中では加納さんのそれがあり、そして兄弟は衣装を変化させることで成長と心情を表しているのは面白いと感じました。
そして演目の特性上、すでにあるものをそのまま衣装化したのではなく、いろんな要素を組み込んで出来上がったお衣装でしょう。
小原さん(デザイナーさん)は博識というか常にいろんな資料を研究されているんでしょうね。
もうほんと、よくできてるなーの一言です。


あのかみしも風の羽織最高だからブロマイド売って?めっちゃくちゃ綺麗じゃない?あのサイドにプリーツ入れてくるとかなんなのその発想。
舞の時に、羽織にはいったスリット(切れ込み)の位置と長さが絶妙ですんごい綺麗でした。運動量的な(踊りに邪魔にならないように)意味合いもあるでしょうが、それをデザインに上手に落とし込んでいると思います。はーーーーー最高。

 

母上他の加納さんや人間キャストの衣装についてはちょっともう覚えてないので割愛です。加納さんがTwitterで一部の衣装は用意されたものと発言されていたのであれも小原さんってことですね。すげえな。なんでも作れるの?神なの?なんなの?それともスタッフがすごいの?平安担当とか甲冑担当とかいるのかな……(時代劇系の衣装なんかは専門の会社的なところがあるとは思いますが)
なんにせよ小原さんの凄さが遺憾なく発揮されたお衣装でした。

 

あとね、縫製がすんげえ綺麗。いい工場とお付き合いしてんだなあと別の意味で感心しました。