今回は思ったままを書きます。いつもじゃんっていうのはまあ置いといてください。
大まかな感想の後に細かい解説を続けるので、長文オッケーな方は最後までお付き合いください。
シルバーのコートにびっくりしてなんかぽかんとしたまま刀剣男士に見とれてたら終わるというのを十何回か繰り返して、やっと衣装をきちんと見ることができました。かっこよすぎるんですよ!あとですね、めちゃくちゃ好きなキャラがいっぱいいるからたまに文章おかしいけど気にしないでください。
今までにない二部衣装だった!
二部衣装のメインって第二形態だと思うんですよ。時間も一番長いし。
今回は戦装束になぞらえたお衣装でした。これ、初めてじゃないですかね。
今までは全体のテーマのようなものがあって、そこに各キャラの個性やモチーフを乗せてアレンジしたデザインという感じでしたが、今回は完全に戦装束からのデザインであって共通のテーマがない(強いて言えば『戦装束」がテーマ)。
まず配色がそのまんま。見れば見るほどに戦装束のモチーフが取り入れられています。でも陸奥守や和泉守は洋装になってるし巴さんはあれ(戦装束)からあれ(二部第二形態)にどうやったら変換できるのか……
戦装束からのデザインなのにすごく新鮮でかっこいい。あんなに見慣れた戦装束からだって最初は気づかなかったくらい(各キャラに見とれてたせいもあります)。
戦装束からの取捨選択とデザインへの取り入れ方がすばらしいんですよ。
堀川 戦)白シャツ+赤リボン→衣裳)白いシャツに赤い縁取り(衿周りと前立て)
大和守は段だら模様(三角の連なり)がジャケットの背中とシャツの衿に入っています。
陸奥守は戦装束より衣装は彩度を落として暗めのオレンジと紺色。これは全体とのバランスの意味もあるし、単純にこっちの方がジャケットとパンツになった時にかっこいい。プリントの模様は戦装束からですね。
兼さんは胸にある模様をそのままジャケットにがっつり入れて、羽織はキャラ色としてベルトとジャケットのアクセントに残しただけ。この取捨選択。
巴さんは何をどうしたらあのデザインが出来上がるのか全くわからないけど、あれはどう見ても巴さん。カフスのプリントは薙刀の鞘の模様ですね。(デザイン面での解説は後述)
長曽祢さんはパッと見そのまんまだなという印象だけど、羽織もなければ全然違う形だし上衣は戦装束は白だけど衣装は黒。なのにあのワイルド感はそのまま。
どういう思考回路をしたらこんなの出てくるの?デザイナさん天才だな!!!
お分かりかと思いますが、むすはじのお衣装はかなり好きです。褒めるところしかない。
全体ではファーを取り入れてあります(巴さんは腰のひらひらが羽根のように見える)。全振りの共通点はそれと少量の黒の合皮だけ、個性の殴り合い。なのに喧嘩になるわけでもなくどの組み合わせになってもかっこいい。
戦装束として見慣れている印象を引き継いでいるからというのはあるでしょうが、それを上手に残しつつ、全てが新しく構築し直されているお衣装でした。
各衣装の解説
第一形態(銀色のコート)
まあびっくりしたよね。初見は20世紀の近未来か!?って思いました。自分の目で見る前からこれがイマイチというのはかなり聞こえてきていたので初見は「ははあなるほど」と思っただけで終わりました。余談ですが、第一形態のコートの素材は各公演全部違います。どこまで挑戦し続けるのか、そもそもそんなの意識してないのかはわかりませんが。(記事を書いている現時点はみほとせ再演まで)
このコートも今までとは違って、個性が最小限です。アレンジがほとんどない。
コートの色も肩の布も飾りベルトも肩の覆いも全部同じで統一感がすごい。
巴さんだけ肩の布が左なのはなぜでしょう?思い当たることがあったら教えてください
統一感の中にも個性がちらりとしているところがまたにくいです。
アレンジとしてコートの裏地がキャラの色(≠イメージカラー)+動くとチラ見えするパンツの色が効果的な差し色になっている=各キャラの印象
シルエットで差をつけて各キャラがかっこよく見える工夫がされています。
長曽祢さんと陸奥守は(体幹ががっしりしているので)無理にウエストを絞っていない・裾のボリューム少ない >>このふた振りはベルトを上の位置に持ってくることで視線をずらしている。
巴さん、ウエストをぎゅっと絞って裾部分はフレア+ロング丈で一人だけひらみすごい。さらにスリットが入っているので、ターンする動きで広がってさらに綺麗。
兼さんは巴さんに少し近いものの、丈は膝丈でフレアはまあまあ+後ろスリットでダンスの足さばきが三倍かっこよく見える。(巴さんと兼さんは下に追記)
堀川はきっちりウエストラインにベルトを持ってくることで正統派感(しかも兼さんとお揃い)
大和守はベルトを斜めにしてて遊び心がありつつスッキリきれい。
なんかこのコートイマイチだなあと思った方はぜひもう一度違う視点からも見てみてください。
肩布、この色でこの布なの大正解すぎてひれ伏す。(あのシックな、でも黒じゃないのを選ぶ感性にありがとう)
追記2019/10/16
コートではそれぞれスリットの深さが異なっていて、本来の動きを妨げないためのスリットの深さのキャラがいる中で、巴さんと兼さんは後ろ中心のスリットがウエストまで深く切ってある。これがあるのでダンスの時に裾がひらりっとする。(センターもウエストから下が開いてる)他のキャラのセンターの裾の開きはスリットと同じく動けるところまで
「スリット」とは 似て非なるもので「ベンツ(ベント)」があります
スリットはタイトスカートの脇の切り込み、チャイナドレスの脇のセクシーな切り込みと言ったらパッと思い浮かぶでしょうか。スリットは隙間から見えるのがポイント。
ベンツ(ベント)はメンズスーツの後ろ中心にある切れ込み。こちらは重なりがある。 トレンチコートの後ろ中心のもだいたいベンツ。
どちらも「動きを妨げないため」の役割があります。もちろんデザイン的な面も。通常のメンズ服ではスリットを使ってるのを見たことがない気がします。そういう”メンズには使わない”みたいな思い込みにとらわれないところも農本さんのデザインの面白さだと思います。
各キャラの解説(第二形態・第三形態)
・堀川
多分一番「そのまんまじゃん」って思われそうな堀川くん
戦)紺のジャケットとグレーのパンツ→衣装)紺の上下 ここからもう思い込みをぶん殴られた気がしました。
堀川くんといえば優等生感→ジャスト丈のジャケット、細身のパンツ。
ジャケットの裾に白を重ねるなど視覚の印象を効果的に使って、清潔感・優等生感が出てる。反するように、シャツの前立てと衿周りに赤+控えめながらボタンで留められてない(開いてる)
「いい子ちゃんに見せてそれだけじゃない」という堀川らしさ
ラペルにレース重ね+スパンコールのブレードは舞台映え
戦装束から持ってきたものは、肩の布の部分で赤を重ねているのを二部衣装のラペルにアレンジ・ジャケットの裾の白い縁取り・白いシャツと赤、でしょうか。それをそのままではなく構築し直している、という意味が伝わるといいんですが……
何よりジャケットの袖が七分丈なの最高!手袋と袖の間に見える腕のバランスが素晴らしい。ありがとうございます。
ジャケット後ろの赤い紐が兼さんとお揃いです。
あとね、ジャケットの裾に重ねた白い部分が完璧な分量とカーブですっごくきれい。
インナー(第三形態)
みんな大好きカマーベスト=優等生が隠してた色気!露出してないのにこの色気!なんなの、堀川恐ろしい子 。
袖ぐりというか肩の少し内側に入ったラインが絶妙で、カマーベストとシャツでこれって…堀川最高!しんだ。大好き
・和泉守兼定(兼さん)
シュッとしたタイトな印象。ジャケット丈も含め全てが手脚の長さが存分に美しく見える絶妙なデザイン。さらに長い髪が映えて、しかも髪飾りがリボンで可愛い!このギャップにしぬ。
ジャケットは凹凸のある生地で戦装束にある模様がグレーでプリントされてます。ベストはレース地重ね(長曽祢さんとお揃い)。
腿のサイドの模様を上の方に持ってきている+ロングブーツで足の長さとのバランスがいい。(天狼伝は手脚の長さを持て余してる感があってもったいなかった)
踊ると腹チラする!!!
兼さんは赤(臙脂)とグレー+黒でまとまって余計なものが一切ない。だけどジャケットのラペルのファーとベストに重ねたレース、インナーの赤いシャツとゴールドがチラ見えする。装飾しなくても華やかってあるんだな。兼さん(長身・長髪・手脚長い)だからこそのお衣装。
キャラ色の浅葱色はベルト等にちょこちょこ入っていてアクセントになってます。
インナー
かっこいい。それ以外いらないよね。
シャツ黒で前立てと衿が赤だったんだー、そっかーかっこいいー!!
ここで堀川くんを思い出してください。堀川はシャツは白地に衿は縁取りだけ赤、兼さんは衿は赤一色(シャツは黒)=同じにしていない。安易にお揃いにしない!デザイン的に絶対にこっちの方がいい(個人的好みですけど)
シャツの胸のあたりの斜めの飾りテープがその位置以外ないよねっていう黄金バランス。最高。
あとですね、ジャケット脱ぐときにシャツのボタン外れて金ラメのインナーばーんってなる回が何回かあったんですが(らぶフェス)、シャツのボタンを取れないようにしないでおいてくれてありがとう。正式なデザインではシャツ開けないんだろうけどサービスですよね。パプニングサービス。
・長曽祢さん
上はベースはオーソドックスなテーラードジャケットなのにパンツはすっごいカジュアルダウンしたゆるっとしたシルエットの組み合わせがハマっているのがすごい。
ジャケットは見頃のセンターにジャガード生地を使ったテーラードジャケットとレース重ね地のベスト(つまりどちらかというとシック・エレガント寄り)とカジュアルなボトムスとの組み合わせに違和感がない。
ジャケットに合皮を使ったデザインアクセント+ジャケットの前を大きく開けてある+シャツもオープン(このシャツが白地に前立てが黒で、兼さん・堀川と同じテイスト)=ワイルド感 になっていて、カジュアルなパンツと相まって長曽祢さんらしさが出ています。
そしてショートブーツ!!
インナー
バーンと前開けちゃったじゃん。ワイルド全開じゃん。片袖が半袖でオレンジ色がずばっと入ってて三度見した。
パンツの脇(ジャケット脱いでやっと見える部分)にオレンジの切替があって、そういうところ!!!ほんともう…好き。
脱いだら袖のオレンジとパンツのオレンジが出てくるんですよー。やだもうー。好き。
・大和守安定
キャラの解釈違いがあったら申し訳ないですが
テーラードベースに衿が丸く大きい+ショート丈がキュートな印象。
衿にサテン地・レーステープとレース重ねを使って華やか。さらにポニテのリボン飾り!可愛いがすぎる。
背中にはシンプルにダンダラモチーフ。
ジャケットの打合せを斜めのデザインにすることで単調さやただ甘くなりそうなところを抑えてます。
パンツは普通の白。ここに袴のグレーではなく白を合わせたところがイイ!サスペンダーは堀川とお揃い。
きっちりジャケットの前を閉じているデザインは安定と堀川だけです。
黒のロングブーツで全体に可愛くなりすぎないように引き締めています。
インナー
シャツも衿にダンダラ。シンプルに見せて、フロントのピンタックや白と水色の切替が凝っています。そしてキャップスリーブ(ちょこっとした袖)が可愛いです。これ、メンズでは絶対にやらないやつだよ安定だから似合うんだよありがとう!
そしてここにきて黒(合皮)サスペンダーがブーツと合わせて甘さをキュッとしめるアイテムになってるのもすてき。
・巴さん
一番びっくりした。すごい。
兼さんとの対比を意識しているのかな?という印象を受けました。
曲線、中性的
ジャケットのフロントデザインに大きく曲線、ロング丈+ジョッパーズパンツ+ひらひら腰布で丸みのあるシルエット
+
ウエストを絞り、ひざ下も細く黒いロングブーツでしめてる。
襟元を大きく開けてインの黒いシャツ(ボタン開いてる)=男性的。
この曲線のシルエットと黒色の使い方が絶妙でその結果がかっこよく美しく中性的な雰囲気
巴さんのダンスが映えるお衣装ですね。
くるくる回るとジャケットの裾と腰のひらひらの羽根がなびく。兼さんはまっすぐ細身なシルエットに対して巴さんはウエストを絞ったうえにジョッパーズパンツ(腿が膨らんでいる)からロングブーツなので、並ぶとそれぞれがさらにかっこよく見える。これは多分巴さんは普通の細身のパンツにしてしまうと兼さんとバランス悪くなると思います。面白みも欠けますね。
パターン的な部分ですが、ジャケットは裾自体は広がった形ではなく薄手の生地と後ろ中心の深いスリットでひらみが出ていると思います。
後ろ腰の飾りベルトをつけることで後ろ姿が単調にならない、ボタンの色がドンピシャで細部へのこだわりを感じる。ありがとう。
<シャツ(黒)のボタン:金色、ベスト(白)のボタン:黒、ジャケット(白)のボタン:金色)>
右手だけ黒手袋は第三形態の、右がノースリーブ・左が長袖になった時の全体のバランスがとてもいい。
左が長袖は戦装束からでしょうか。でも、ブーツは戦装束からいくと白になりそうなところを黒にしてる、ここでも取捨選択です。
ベルト白、ブーツ黒、っていうチョイスが最高。
追記2019/10/16
巴さんのお衣装のすごさをどうしたら伝えられるのか……語彙力が来い。 あのボタン、配色が逆だったらもう絶対印象かわるし違うんですよ!ジャケット生地が薄いのとか、全てが『これじゃなきゃダメだったやつ』で構成されている。
パンツのセンターステッチもさぁー縦長効果ドーン!じゃん。丸みのあるシルエットに引きずられすぎない、巴さんだって脚長いんだからねッて感じがする。
あのトップス、普通はボトムスのボリュームでトップスの裾にシワが寄ったりスリットが広がった状態になるのはヨシとされない。そこをあえて”トップスの裾を広げたデザイン”にしないでしかも薄手でひらひらした感じを表現してるところがすごい。フロントのカーブも衿元もかっこいいんだけど、こういうところホント好き。
肩幅と腰回りのボリュームを出して、ウエストと膝下を絞ることで女性っぽい曲線のシルエット。衿回りのカッティングがシャープ。きっちり閉めたシャツが上品。そして黒の使い方。巴さんの体型(背が高い・手脚長い)と繊細かつ大胆なダンスと合わさって、なんとも言えない中性的な『巴形薙刀』そのものになる。
・陸奥守
そうきたか!!ですよ。
暗めのオレンジと紺色。奇をてらわないデザイン。で、めっちゃくちゃむっちゃんじゃん。尻尾見たいなフサフサはそのままっぽい(でもそのままではない)けど、それがなくてもむっちゃんじゃん?なんで??
上下同色のスーツにして、袴の紺色をセンターのデザインにがっつり落とし込んでいます。そしてそこに陸奥守の模様をあしらっています。単純に上をオレンジの下を紺色じゃない。
ジャケットの見頃に織柄生地(か凹凸のある生地)を使って変化を持たせつつ、パンツの後ろ寄りが紺色の切替*でそこもまたただのシンプルじゃないところがいいですね。
そして白のベルトの装飾+腕まくりの部分が白で、戦装束の中の白の割合のところがデザインアクセントになってます。
指ぬきグローブ(手甲)が黒。戦装束は白いの巻いてるんだぜ……
さらにロングブーツにしてないところにむっちゃんらしさが出てます。
インナー
裾さあ、ラバー加工じゃない?ねえ、どうなの????気づいた瞬間まじかよって叫びました。*
*のところが特にそうなんですが、デザイナさんは回を重ねたのもあるし他でもたくさん勉強されているのかな?メンズのカジュアル服(紳士服じゃない方)のテイストを取り入れてますね。陸奥守のパンツの切替方は後側に寄せてある(脇ではない)のとか、長曽祢さんのパンツはまんまメンズカジュアルです。
みほとせ再演でも再認識したというか、さらにパワーアップしたなと思ったのはデザイナさんの引き出しがどんどん増えてるんですよ。
もう一つ、この方の最初の印象から『テイストのミックスが上手い』があります。
テイストのミックスっていうのは、例えば軍服の要素と和服の要素を組み合わせるとかです。こういうミックスやアシンメトリーはやりたがる人が多いんですが、難しいです。
テイストやすでに出来上がっている形にはそれなりの伝統や理由があってのことです(つまりはすでに完成しているデザイン)。それを無理に崩すと良さが失われてしまうんです。それを壊さず崩す、別のモノと融合する。計算というよりも感覚でやってる気がします。
(みほとせ再演の青江の衿の片方は着物風もう片方はテーラードカラーはまじでほんとにすごい)
そして、アシンメトリーとシンメトリーの使い方もとても上手です。アシメにした時のデザインポイントの置き方がバランスよくて、全体で見たときにすっごく素敵なんです。
(むすはじでは巴さんの長袖とノースリーブには手袋、みたいな)
縫製・生地の扱い方もプロだなあと思います。双騎で書きましたが、硬さの違う生地を左右で使った時に同じシルエットを出すとか。
阿津賀志から見ていくとどんどん上手になっていってどこまでいくんでしょうか。
デザインセンスに引き出しが増えてさらに衣装の予算も確実に上がって(推測)、この後どんな風になっていくのかものすごく楽しみです。
(執筆現在は葵咲まだ見てません)
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