刀ミュ衣装についての感想と考察

服飾のプロ目線の刀ミュ衣装についてのあれこれ

天狼傳2020 第三形態についての謎

第三形態がつなぎなのかそうじゃないのか、なぜつなぎにしたのかを公演期間中ずっと考えていた

 

公演前届いたブロマイドではパッと見てセットアップの上下だと思いました。でもよく見ると縫い目がつながって見えるところがあって、まさかそんなね〜ハハハ。からの公演始まったらつなぎにも見えるしセットアップにも見えるしなんなのどっちなの!!!!って目を皿のようにして見ました。

 

 

 

すっきりとまとまったデザインという印象ながら細部は凝っていて、それぞれの個性がしっかりあるし沖田組は対だし、なんかもうかっこいい最高!って言葉しかないです。

 

そもそもつなぎかそうじゃないかってそんなに重要?って思いますよね。はい。重要なんです(私にとっては)

つなぎにするメリットってデザイン性以外にはない(二部衣装では)と思うんですよ。
デメリットというか、クリアしなければならない点の方が大きいので、なぜつなぎにしたのか?という大きな疑問が出たというわけです。


つなぎのクリアするべき点とは、ゆとりの取り方です。

一般的なつなぎというとどんな服を思い浮かべますか?作業着、オーバーオール、サロペット……最近はレディースのサロペットが流行ってますね。ゆるっとしたシルエットでズボン部分がワイドパンツになっているやつ。
そう、だいたいつなぎっていったらゆったりしてるんですよ。


ここからちょっと小難しい説明になります。人体の可動の話です。

なぜつなぎがゆったりとしているかというと、人の体の動きを妨げないためです。
動作をした時に背中〜腰は大きく伸びます。『しゃがんだり腕を伸ばしたらズボンからシャツの裾が出ちゃった』なんて経験はあるかと思います。
フィットしたデニムパンツと普通の布のシャツを着ている状態でウエストが縫い合わされていたら?
屈んだら背中がつっぱります。腕を上げられません。

ちょっと昔にローライズデニムパンツが流行した時、しゃがんだ腰の素肌が丸見えなんてこともありましたね。

つまり、上下くっつけたつなぎの場合は、体の動きに服がついていくための”ゆとり分”がとっても多いです。もしくは水着やスポーツウェアみたいに伸縮性の高い生地を使う必要があります。

 

では今回の第三形態はどうでしょうか?

ブカブカしてない、程よいフィット感
スポーツウェアほどのストレッチ性があるとは思えない、普通にかっこいい生地

これで動いてつっぱらないの?
ブロマイドで床に座ってましたけど、食い込まない?

 

というわけで、実はセパレートvsどうみてもつなぎ で毎公演どっちなの対決を一人繰り広げていました。

 

長曽祢さんはまず一番につなぎだなって判定しました。パンツ部分も少しゆとりがあるし。

 

加州はわき腹がちらっと見えたんですよ。わき腹が見えるってことはトップスがずり上がってるってことでしょ?じゃあセパレートじゃん!!

と思わせてからの加州と安定は『作られたわき腹チラ見せ』だった!!!

 

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安定の脇腹

あえてつなぎにしておいて、ラウンドしたトップス裾の隙間から肌見えしているように見せかけるとか天才か!天才だったわ

遊び心の一言で片付けられないですよ!

しかもこのチラ見えは二振りが左右対称。
全体のシンメトリーデザインにチラ見せ窓まで含まれてたー。かわいい。死んだ。

いやいやちょっと待って。パンツ結構フィットしてるよね?トップスは裾のあたりに若干のゆとりある程度だけど、腰回りはだぶついてない。

 

一番の謎が蜂須賀。

どこにも余分なあまり(ゆとり)なくない?すっごい伸びる生地なの?それともつなぎの男士とセパレートの男士がいるの?

→マイク機材が腰じゃなくて背中に入ってた。通常なら腰かな?パンツのウエストから入れるんだと思うんですけど。それが背中ってことは通常じゃない(つまりつなぎ)ってことでしょぉぉ!!

 3枚目の腕を上げた側は脇に布の弛みがない。腕を下げている時には弛みがある。これが”動けるためのゆとり分”と思われます

 

堀川は毎公演どんなに動いても上下のデザイン線に乱れがないのでこれはもう一体型のつなぎだよね、すっきりしてて謎だけど。

サイドのラインが上下つながっていてきれい 

 

兼さんはさ、あの長いおみ足が綺麗に見えるパンツ。あれでどうしてつなぎにできるのかわからん!
普通はですね、背中〜腰で必要になるゆとり分のために股下(ズボンの足が分かれるところ)を下方にするんですよ。でもさ、兼さんの脚はいつも通り長かったじゃん。謎。

 

あの衣装はダンスもしていたし縄跳びもしていたのは奇跡としか思えない。
必要ないところは余計な緩みを入れずにフィットさせ、最小限のゆとり分を確保したということなんでしょう。

あとはストレッチ性高めの生地かな?でもスポーツウェアの生地みたいにはいかないと思うので、やっぱり締めるところと緩めるところの加減がすごいんだと思います。

 

よく観察すると、ズボンがタイトフィットではなく少しゆったりしています。
上衣のウエストにほんの少しのシワが寄っています(シワ=生地のゆとり)
この部分が『最小限のゆとり分』ということでしょう。

 

上下セパレートのセットアップに比べて、つなぎの場合はより厳密なフィッティング(調整)が必要です。
うっかりするとブカブカになってしまったり、逆に動きにくくなってしまいます。
セットアップの方が断然楽なんですよ。でもデザイン面を優先して高い技術でクリアしてるんですね。
第三形態めちゃくちゃかっこいい!!!

 

 

ところで、謎といえばもう一つ
第一形態でコートの裾が翻ったときに、第二形態の裾が見えない仕組みが謎です。
一緒に遠心力でふわーってなるから?それにしたってちっとも見えないなんてことある?(あったから謎)

 1枚目 第一形態の裾の広がりがとても素敵

 

引き抜きの、黒→白→カラー ドーン!って感じがとても素敵でした。
沖田組のマフラーが好きです。スカーフっぽく見せておいて第三になったらマフラーだったところ!
兼さんの第二の裾が裏地は赤を使って、さらに柄の内布がついてるところも好きです。

 

 

あとですね、私の中での萌えポイントは
安定のパンツと蜂須賀の裾の形が天狼傳初演を踏襲してるところです。
具体的には、安定のパンツが膝からギザギザの切り替えが初演と同じ(初演は左脚のみ)、
蜂須賀の第二形態のジャケットの裾の形状が初演の第一形態の裾の形状と同じフィッシュテールです。
そういうところ、大好きです。

 

↓天狼傳(初演)

安定:黒のパンツの膝下が青の切替になっている(左脚)
蜂須賀:後ろ裾が長くなっているデザイン 

 

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2.5dカフェ展示写真

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 安定の膝の切替(ギザギザ)
ズボン部分は座るとフィットする(布が余らない)、ジャスト分量を計算されて作られていると思われる

 

 蜂須賀の裾の形が初演の第一形態と同じ

 

 

かっこよすぎて見るたびに目が回ります。何度見ても解明できないので、まだまだかかりそうです。

 

 

 

 

 

( 文:ミント(id:pmintgreen)、編集・イラスト・画像加工:かんそうぶん(id:Bn295